昔、松○○さんは足柄の雑木林で炭を焼いていました。この松○○さんの指導で、土を使った炭焼き窯の製作に挑戦しました。
昔は雑木林のエリア毎に新しく窯を作り、炭を焼いたそうです。
松○○さんは、”炭を焼く人”のイメージではなく、”火をあやつる人”でした。
この窯を作った時は93才でしたが、残念なことに99才でお亡くなりになりました。
尚、伏せ焼きとドラム缶を使用した簡易炭焼きを別ページで紹介しています。、簡易炭焼き
今回の挑戦で土窯は完成しましたが、次のステップで、炭を焼く時に窯に穴があき、失敗しました。材料の土に原因があったと思われます。
ただし昔ながらの方法で土窯を作る方法は、貴重な資料になると思います。今回は炭にする炭材を最初から窯の中に入れ、”これを燃やさずに”土窯の土だけを加熱させ(空焼き状態)、土窯を作りました。そして、7日後に中の炭材を焼き、炭にする手順でした。
…… ちょっと一言 ……
ここでは、土窯作りと炭焼きが、全てうまくいった場合の手順を記述します。実際には煙突の下が何かが詰まり煙が出ず、また窯の表面に小さな穴があき、これを補修したり、思いがけない事が多々ありました。これらを防止するための注意事項は記載してあります。最後に大きな穴が開き失敗しましたが良い教訓にもなりました。
松○○さんによると、クヌギは6~7年で切ると最適で、8~9年以上では材のサイズが太すぎる。昔は2反(1反=300歩=300坪)あれば1サイクル分として炭が焼けたそうです。
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土の収集
最初に、窯に使用する土を入手するため、昔使っていた窯を探したが、それらの窯には土はありませんでした。新たに古い山道の切通しに土を見つけ、松○○さんがチェックし、OKとした。
松○○さんから教えていただいたことは、 (1)土の選定土を“すな“と呼ぶ。握るとパサパサするものは不可。但し水分が不足している場合は水を少し加えて握る。(“握る”とは土を10回以上握りながらこねる。)こねていると土の特性が徐々に出てくる。握る回数を多くすると土に粘りが出てく
土には少量の砂が混じっている。 (2)土に灰を混ぜると粘りが出る。土にセメンを混ぜると強度がでる。これは補修に使用する。
窯の製作開始にあたり、お清めを行う
工事と火を扱うので、正式に執り行いました。
松○○さん安全に関する話をまとめると次の通り。(1)土窯が破壊すると火柱が立つ。火柱は5m以上になることもあるので、窯の近くと上部には立ち木や枝がかからない場所であること。
(2)煙突の周りはトタン板の屋根で囲われていること。トタン板の下は地面に埋め込み、外部の空気が入り込まないこと。これは煙突からの煙をまっすぐに立ちの登らせるため。
(1)窯の内部
通常は土釜の側面を玉石などで積み上げ、すきまを粘土でシールする。炭は釜の外の空気に触れると灰になるため、シールが良いほど炭の収穫は多くなる。シールは釜の内外の両サイドで行う.今回は耐火煉瓦を使用。
(2)材の配置
今回使用する炭材は杉としたが、本来はコナラ、クヌギでもっと細いサイズ。
(3)材の配置
屋根部の材の配置。
(4)窯の詳細(写真をクリック)
釜底の地面にφ30mm程の材を敷き詰め、その上に薪を縦にぎっしり並べる。 縦方向に丸太を一本置き、その上に横方向にφ30~50mm程度の材を6本ほど渡す。
釜の大きさによって丸太の高さを調節する。調節は丸太を3本組んで行う等。 この材を頂点として縦方向に屋根をかけるように枝を敷き詰める。 人が上に乗って力を加えても動かないようにしっかり枝を組む。。
(5)屋根の構造(写真をクリック)
組み終わったら、わらとむしろを被せて、土をかけても落ちないようにする。わらは一枚で良く、厚く枚数を被せる必要はない。
土は軽く湿り気をもった状態であるが、水を加えてはいけない。空気中の湿気を吸っている程度とする。むしろが見えなくなり、風で飛ばない程度に土を被せ数日置く。
釜作りに使用する土は石ころや土以外のものは取り去ること。石ころなどが混入していると土を乾燥させて、空焼きさせたときに穴があき危険。(炭焼き兼用の場合)
(6)屋根の構造(写真をクリック)
わらの下の構造。
(7)わらの下の構造
(8)入口の様子
新しい窯を作る時は、この入口の大きい石を持っていき、再度入口に使うそうです。
(9)土の準備
土の性質: 1)土は昔炭を焼いていた釜の土を使用することが最適。 2)土の中には砂状の粒子が入っている。 指で土をこねると粘りがあり擦れきれない。
(10)土をならしながら盛る
窯の上で作業する人は、必ず地下足袋を履く。むしろの上に土を均一な厚さになるように被せる。 だだし、最終の仕上がり寸法が中心が90mmで端を120mmにする。) 土は自然放置した湿り気を持っている。水は一切加えないこと。
(11)土をたたく
土を盛った部分の外周に200mm程の杭を1.5mおきに打ち作業範囲を明確にする。 専用杵で均等に打つ。
(12)棒を刺して土の厚さを測る
5mm程度の棒を数箇所、土の中に差し、厚さを測定する。(概略測定) 厚さは頂上が90mm程度で、縁は120mm程度に円周方向に均一になる様十分注意する。手で山を慣らして凸凹をなくする。
(13)土の厚さ(写真をクリック)
石で組んだ入り口部のシールは、石と石の間隙に土を埋め、手で叩く。 土は硬さを増し強固になる。釜の入り口から600mmの個所まで先に仕上げる。
(14)土をたたく順序(写真をクリック)
杵で釜の縁を円周方向に移動しながら2~3人で叩く。杵の打つ面は 土に対し水平にして、一定の同じ方向に打ちつずけること。杵の角で土を打たないようにすること。
叩く強さは中の強程度とし、土が粘土状になり、土の空気が抜ける程度まで打ち続ける。 打ち板は力まかせに叩くが杵は叩きすぎることは良くない。腰を低くして叩く。①の部分は火が直接当たるので、乾燥させる時、重いコンクリート板を2枚置いて。土に圧力をかける。
(15)打ち板の寸法(写真をクリック)
(16)杵(きね)の寸法(写真をクリック)