このページは私の使っている道具を紹介します。道具は彫刻する仏像に最適なものを選定しますが、その都度必要に迫られ追加しています。道具を作るのも趣味の範囲と思っています。
1 基本的な道具(1)(写真をクリック)
写真は教室に入会する時に必要な道具です。教室でセットで購入するか、自分で用意することも可能です。これだけで二体目まで使用し、完成させます。(緑の滑り止めは私が取り付け)。 内容は木槌、彫刻刀(極浅丸、平、丸の3本)、ノミ、収納袋です。そして樹齢500年前後の杉の三角柱(約40cm高、実費)を彫刻します。二体目までは霊木の杉です。
■この他に各自用意するものとして、曲尺、ノコギリ、コンパス、鉛筆(4B)、複写用カーボン紙、消しゴムです。その他各自好みや必要に応じて、彫刻刀、ノミなどの道具類を追加していきます。
(入会の詳細は大雄山最乗寺のHPを参照ください)
2 基本的な道具(2)(写真をクリック)
ここから紹介する装具は、私が使っている道具です。必須でないものもありますが、あったら便利です。
写真の曲尺は30cmより大きいものが便利です(仏像彫刻には尺目盛りが一般的ですが、小さな仏像は目盛りがcmを使っています。尚、曲尺に直角が出ていないときは修正が必要です)。木槌は、大きな音がするので、家では写真のゴムハンマーと小さなプラスチックハンマーを使用しています。
道具には100ショップの製品も多用しています。
3 基本的な道具(3)(写真をクリック)
ノコギリは両刃ノコと造作用ノコを使用していましたが、現在は写真のノコを使用しています。上から竹引きノコ、タボキリノコ(柄は木に交換)、シャークソウです。彫刻作業によく使うのはタボキリノコです。細かい細工部に最適でアサリがないため、きれいに真っ直ぐ切れます(厚切は鋸刃が挟まり動かなくなり不向き)。
作業で材を縦に挽く時は、横引きノコとノミを使用します。*(現在は横引き刃に縦引き刃が少しは入ったノコも使うことがあり。)*竹引きノコを使用する理由は荒彫りの時にノコ目を入れますが、ノコの板厚が少し厚いので切り口がわかりやすいため。
4 基本的な道具(4)(写真をクリック)
写真上部は外パス、次にスケールで上から順に、自由に曲がるスケール、中央部分が0表示スケール、コンベックスをカットしたもの。(外パスは現在使っていません。)
5 基本的な道具(5)(写真をクリック)
小さい仏像の製作に、小さいノギス(10cm)を多用。中間のデジタルは、本来竹とんぼ用ですが、視力が弱いので正確な測定値を読む時に使用。
6 基本的な道具(6)(写真をクリック)
ノギスはプラスチック製(100均)ですが、次の改造を行っています。
スライドのストッパー(ネジ)を追加し、測定する爪に柔らかいプラスチックとアルミ板を取り付け。また目盛りが消えないように目盛り部にクリアスプレー。深さ測定のため、ステン棒に合わせてノギス端を削ってあります。
写真の中央のようにプラスチック部が曲がるため、仏像の段差がある部分(写真左)の測定ができます。
7 基本的な道具(7)(写真をクリック)
糸ノコ
深くて狭い箇所に使用します。糸ノコ専用の鋸刃でなく、市販の鋸刃のピンを取り、長さをカットしています。3.0mmφの穴があれば使用でき、ノコ刃は90度ごとに変えられます。
8 基本的な道具(8)(写真をクリック)
コンパス(開き角度固定用に回転軸ネジを蝶ネジに交換)、スコヤ、ステン直角定規、デバイダー、シャープペンシル(0.5φ、4B)、(その他、軍手(左手)、薄い手袋(右手)、拡大眼鏡)4Bの鉛筆の代わりに、少し汚れが少ない色鉛筆を使用しています。)
9 基本的な道具(9)(横線引き)(写真をクリック)
複雑な仏像を彫る時など、仏像に縦横の格子線を引く必要があります。格子線が無いと、バランスが崩れ、良い作品が作れません。(初心者)
■写真は自作のトースカンです。これを使うと容易に仏像に水平な横線が引けます。右の写真はスケールから寸法を読み取る状態です。シャープペンを水平にした時の高さMAXは。大;50cm、小:37cm、です。
■基台は木のブロックの下に鉄の錘(四角のワッシャー)を取り付け、重くしてあります。ペンはコンパスを分解し、取り付けます。アームはホームセンターで購入。長い垂直な棒2本は、鉄の丸棒です。
トースカンは厚手のガラス板や平面が良く出ている金属板などの上で使用します。(ガラス板が平面かチェックが必要。)
10 基本的な道具(10)(トースカン用)(写真をクリック)
左側の写真はトースカンでスケールから長さを読み取るスケール固定台です。スケールは木に埋め込んだ磁石で取り付けてあります。スケールはほぼ垂直になっており、読み取り誤差は無視できます。写真の右上はスケールのガイドを付けてあり、スケールを上下することで、ゼロ調整も可能です。同じ台の反対の位置にあります。トースカンのかさ上げにも使用します。
■写真の右下は通常している小型のスケール固定台です。40cmまでのスケールが使用可能です。
11 私の道具(1)(縦線引き1)(写真をクリック)
■レーザーポインターを使って縦線を引くための道具です。
市販のレーザーポインターに、絞り用キャップと連続点灯用スライド筒のスイッチを取り付けました。
文珠菩薩で頻繁に使用したので、専用に取り付け架台を用意しました。誤差を少なくするため回転軸を固定し、横傾斜の調整ネジを付けました。台のアクリル板は、辺をレーザー軸に平行(直角)としています。
■レーザーポインターは像が複雑な形状の時にたいへん便利。像に数か所ポインターでマークして、ポイント間を柔らかい定規で結びます。
12 私の道具(2)(縦線引き2)(写真をクリック)
■レーザーポインターの設置全体図。
写真は定盤にアルミの金属板を使用しています。トースカンもこの板を使用します。
13 私の道具(3)(縦線引き3)(写真をクリック)
■ポインター使い方1
■像に垂直線を引く
(1)像の基準ポイント(例)に照射し、ポインターを下に回転させ像の下端にポイントを照射し、そこをマーキングする。
(2)ポイント間を線で結ぶ。
*ポインターを横に移動させる時は、アルミアングルに沿って横にスライドさせる。像の正面をスコヤ等で常に定盤の基準線に直角にする。
像の基準点をスコア目盛りの3cm(例)に合わせておけば、スコヤの目盛りを使って像の基準点からの任意の距離に垂直線が引ける。
スコヤは像の位置決めと左右にスライドさせるのに便利。
*定盤にガラス板を使用する時はスコヤの代わりに自作のT定規を使用。定規を定盤に直角にしてクリップで止める。
14 私の道具(4)(縦線引き4)(写真をクリック)
■上の図の写真例。
写真の右はスコヤの目盛り6.0cmに像の基準点(黒点)を合わせた。右下は黒枠線の拡大。
ポイントが小さくて見にくいが、実際には輝度が高いのではっきり見える。(スコヤのポイントが反射して木に赤く映っている。)
写真左は像の基準点の照射部。
15 私の道具(5)(縦線引き4)(写真をクリック)
■ポインター使い方2
■右手のこぶし位置を図面寸法に合わせてマーキングする。
(1)こぶし位置を図面から像の基準点から1cmと読み取る。
(2)ポインターを、基準点3cmから1cmスライドさせ、目盛り4cmに照射し、そのままこぶし位置まで上げ、横線と交わる点をマーキングする。(事前にトースカンで横線を引いておく)。
16 私の道具(6)(縦線引き5)(写真をクリック)
■ポインター使い方3
像が仕上げ近くなり足元を削ると、定盤の基準線に合わせることができなくなる。この時は仮の台座を用意する。
大天狗の場合は写真の仮台座板を用意した。しかし使わなかった。
仮台座板と像は、ピンを植え込み連結した。
17 私の道具(7)(縦線引き6)(写真をクリック)
■ポインターの調整と確認。
常時はチェック不要ですが、必要に応じて使用します。
(1)ポイントを定盤の基準線に合せる。
(2)T定規の下端に照射させる。
(3)T定規の上端に照射させ、(1)~(3)がズレていないことを確認する。
1m先に垂直に糸を張り、定盤を水準器で水平にして調整したが、水準器の精度が悪く上記の方法を採用した。
18 私の道具(8)(縦線引き)(写真をクリック)
**参考用です。現在使用していません。**
■T定規を使って縦線を引く道具です。
T定規は左下の黒い部分を支点にして傾斜させ、ペンを縦にスライドさせ、仏像に数点マークを付けます。
19 私の道具(9)(写真をクリック)
不要なレコードプレイヤーのターンテーブルを改造し、回転台にした。この上に仏像を置き回転させると、意外にも不自然な箇所が発見できることがあります。トースカンを使い、回転させて台座などの横線が引けます。
■右は長さ12cmの刷毛です。切りくずが簡単に払えます。園芸用シュロ紐をほどいて作りました。優れものです。* ただし繊維の太いものを使用する必要があります。
20 私の道具(10)(写真をクリック)
彫刻刀とノミの刃を整える?のに使用。切れが悪くなった時、この上を数回撫でると、なぜか切れ味が戻ります。*新規に砥いだ時、刃先の返りが取れる時もあります。刃先が丸くなったものは効果無しです。木の板に鉄板を張り、薄いナメシ皮を張って、青棒と少しのミシン油を塗りつけてあります。下の2本の棒は丸刀用です。
20-1 私の道具(11)(写真をクリック)
電動研磨機
電気ドリルに革の円盤を取り付け、青棒を塗り、低速回転させることで刃先を容易に研磨できました。切れ味も驚くほど良くなります。砥石だけで同程度の切れ味を出すのは私には無理です。
■写真の革の円盤は上下2枚あり、下の薄い円盤は丸刀の内側が研磨出来ます。尚、ドリルに円盤を取り付けるだけでは円盤がブレてしまい、このブレを無くすのに工夫が必要です。
21 文殊菩薩用(1)(写真をクリック)
■白毫 水晶の原石は、ガラクタ市で購入したもの。先生に水晶原石をお見せして、これを加工したいと話したら、ダイヤモンドでカットするが、ガラス玉も普通に使われているとのこと。
道具は貝細工で使っていたダイヤモンドカッターでカットし、ルーター用研磨パッドに当てて、水研ぎで研磨しました。直径1.8mmと小さく、またたいへん硬く、試行錯誤のすえ、写真のように丸棒に埋め込んで接着し、加工研磨しています。左から原石、丸棒に埋め込んで円筒状に加工、研磨した完成品です。この後、根元部分を白く塗装します。ダイヤモンドが無い(?)昔はどのようにしてカットし、研磨したのか不思議です。
22 文殊菩薩用(2)(写真をクリック)
■この仏像を彫るために追加した道具。
■木が硬く、彫刻刀では力を入れて彫る事が難しく、また奥深い部分が多いので、中古で購入した小道具(8本)とノミを多用しました。小道具(ノミと彫刻刀の中間の仕様)は丈夫で良く切れます。
■頭髪用に両刃のナギナタ型デザインナイフ。糸鋸の歯を狭い所で引けるように細工。彫刻刀平3本を製作(海外製ジグソウの歯を加工3.5/5.0(ハイス鋼)/6.0mm)。超小型彫刻刀平を目、口用に使用(1.0mm~3.0mmの先端ビット5本セットで刃先形状を変更、右は保持器)
■小さな部分を削る時に、頭にバンドで取り付ける拡大鏡(1.8~4.8倍で2.3倍常用)を使用。これは左右の目に別々のレンズ(1.8/2.3倍)があり目が疲れにくい。
23 大天狗用(1)(写真をクリック)
大天狗を綺麗に彫るために追加した道具。
■写真上から傘屋小刀(1.4mm厚)、細工ナイフ(園芸用(2.0mm厚)、竹とんぼの師匠からいただいた全鋼の刃物鋼板(板厚1.0mm)を両刃のナギナタに仕上げたナイフ。これらをスライスするように削ります。下のノミは岩座を彫る時に深く掘るためノミの刃角を小さくしたもの。刃角が大きいと、木が割れてしまうため。
24 大天狗用(2)(写真をクリック)
写真は自作のバイスです。下は岩座を固定した状態。
岩座を彫る時、膝の上でノミを少し強く叩くと安定性が悪く、危険なため、少し大きなバイスを作りました。締め付けるサイズは24cmまで可能です。小さな部品はバイスで固定して使うのが良いと高○さんから教わりましたが、大きいものを固定するための追加です。
■制作したバイスはアルミの既製品を分解し、アルミ角棒と鉄板でバイスのレールを延長し、長い送りボルトに交換しています。当初は上の写真のように、ハンドルを回して素材を固定していましたが、固定するのに時間がかかるため、下の写真右端のように、送りネジの固定ピンを外し、ハンドルをフリーの状態で、蝶ナットで締め付けています。
1 作図 (写真をクリック)
写真などを利用して図面を作る時、パソコン用CADのフリーソフトInkscapeを使用しています。CADのため実寸で画像が作れ、専門知識はさほど必要はありません。日本語の操作方法がHPで詳しく公開されています。
■作図方法のイメージ:(1)A、B、C、Dのレイヤー(透明な紙のようなもの)を作る。(2)”D”に格子(2cm等)を作り、修正不可にロックする。(3)”A”に写真等をインポート(挿入)する。
(4)”A”の写真を製作する仏像のサイズに拡大縮小変形等で修正し、格子”D”のスケールに合わせる。(5)"B"に写真の輪郭をペンツールでなぞって画像を作る。
■写真が歪んでいる時は、画像を修正する必要があります。**写真は一般的に鑑賞や記録のために撮影されており、写真は歪んでいるのが常です。昔は歪みを少なくするために、ズームレンズはNGで、望遠の単焦点レンズで出来るだけ遠方から撮影しました。最近はソフトで修正可能な場合があるようです。
2 作図 (写真をクリック)
(6)”A”を非表示にし、レイヤーを選定すると図のような表示と印刷が可能。
■赤の格子”C”は仏像の作図に使用します。立像の場合、足元から額の生え際までの長さを10として各部位の寸法が決まりますが、参考にする写真が正面図しか無い場合など、背面、側面図を作図する時等、この赤い”C”格子を使います。この格子は10等分の間隔に合わせます。
■古来からの尺貫法で製作する場合は黒い格子”D”を尺貫法にし、メートル法の場合はcmにします。本来、赤の”C”と黒の”D”を同一にすべきですが、トースカンでスケールから数値の読み取りが容易なように”C”と”D”を別にし、”C”格子は作図用、”D”格子(cm)は製作用としています。A~Dを一括して材料のサイズに合わせて拡大縮小が可能です。
■印刷方法:実寸で印刷する方法は二通りあります。(1)Inkscapeで直接印刷する。(2)InkscapeはPNGファイルを作成できるので、これを他の画像ソフトで印刷する。A~Dの組み合わせを自由に印刷出来ます。
3 作図 (写真をクリック)
(7)実際に作図したサンプルは左のとおりです。(ただし顔を消して、サイズは適当に変えています)。私の場合、格子は2.0cmで固定し、画像の大きさを使用する材に合わせて拡大縮小します。 実際の図面は、一つの画面にレイヤーを変えて、正面図、左右の側面図、上面、下面図を描き、各図面どうし重ねて、位置やサイズなど部分的に一致しないかチェックし、不具合があれば修正します。*仏像に格子線を描き、図面の格子内の像と同じになるように彫刻します。作図に利用する写真などは歪んでいることが多いです。*どの部分が正確な寸法か見極める必要があります。
■InkscapeはCAD専用のソフトではなく、CADに近いソフトです。機能はadobe Illustratorに近く、趣味で使うのであれば十分な機能を持っています。
■Inkscapeで図をコピーすれば、他のソフトにWindousメタファイルで貼り付けができます。