このページは研ぎ師の吉○さんから指導していただいた事をまとめました。
ノミの研ぎをマスターすれば、彫刻刀も基本は同じと理解しているので、ここではノミの研ぎだけを記述します。*指のコントロールが大切です。
このページに記載されている内容だけで砥いでも良い結果になりません。必要な内容ですが十分ではありません。自分で模索しながら勉強する必要があります。
どんなに良いノミであっても、研ぎが出来ていなければ良いノミの意味がないとのことです。
1ノミの研ぎの完成品(写真をクリック)
■研ぎ終わって完成した状態のノミです。ノミの刃先は左右に隙間がでるように、少しカーブしています。彫刻用のノミはこのように砥ぎます。このように砥ぐと彫りやすくなります。*また横に滑りにくくするので危険防止になります。ノミの左右の端の角が丸くなったり、欠けたりしていると良く切れません。
ノミがうまく砥げていると表の面の曇りが平均化されます。そして、刃先の線と反対側(手元側)の線が平行になっている必要があります。返りが取れない時は、ノミを少し立てて、軽く砥石にこすります。
2研ぎ場(写真をクリック)
研ぎ場は境内の書院の傍にあり、研ぎ師の吉○さん用と自由に使える2人分の研ぎ台が用意されています。砥ぐのに不明なところがあれば、吉○さんが指導していただけます。写真は女性が吉○さんに指導していただいているところです。熱心にノートに記録していました。
3研ぎ台と砥石(写真をクリック)
研ぎ台です。水桶に板を渡し、その上に溝付のゴムを敷いています。そして板の手前側は水平より高くして、反対側を低くしています。理由は研ぎ汁が手前に流れてこないようにするためです。
■砥ぐ砥石は人造砥石で十分とのことです。通常は中砥石と仕上げ砥石があれば良いが、仕上げ砥石は必ず裏研ぎ専用の砥石を用意しなければならない。もし砥石が裏表両方使用出来る時(台の無い砥石)は、どちらかを裏研ぎ専用にすること。彫刻刀は裏を砥ぐ時、砥石の側面や砥石の上下(研ぎにあまり使用しない部分)を使用しても良い。
裏を砥ぐ砥石は、真平らであることが必須です。そして裏の鋼は薄いのでむやみに砥がないようにとのことです。
■私は刃が欠けた時は荒砥石、平面を出す時や裏を出す時にダイヤモンド砥石で軽く研ぎます。(力は入れない)また数多くのノミの裏を砥ぐ時は、回転水研ぎ中砥石でOK。
4ノミの研ぎ基本(1)(写真をクリック)
今まで刃物を研ぐ時は、砥石に刃先近くを指で押し付けて砥いでいました。砥石の平面が出ていれば、刃先が丸くならないで平らに砥げました。
しかし、この方法では、刃先の近くを指で押さえて砥ぐため、刃先が見えにくく、指を刃先で傷めることがあります。この方法はNGとのことです。
■吉○さんは研ぎの基本として、◎右手は砥石に平行に前後に動かすだけで上下に力を加えない。◎左手はノミの上に添えて置くだけで、力を加えない。力を加えない理由は、砥石が減るのを防ぐためとのこと。
■砥ぐ時は砥石の全面が平均して減るように砥石の研ぎ位置を変えます。
(吉○さんは写真ように手袋をはめてスイスイ砥ぎます。手がアレルギー?のためか荒れるので、保護のため)
5ノミの研ぎ基本(2)(写真をクリック)
■吉○さんが繰り返し言われるのは、◎砥ぐ時に写真のように右手首を真っ直ぐにして曲げないことです。手首を曲げると刃先が丸くなり、切れ味が落ちます。手首を曲げないようにするには、竹を二つ割りにしたり添え木を当てて手首が動かなくすると良いとのこと。
■今まで言われたことを忠実?に実施しても、刃先が丸くなったり、偏って砥いだりと、うまく砥げませんでした。左右の指をコントロールすることで、現在はかなり平らに近づいてきました。まだ先が長いです。砥ぎながら工夫が必要です。
研ぎは結構奥が深い。
6ノミの角度(写真をクリック)
ノミの角度は一定にすること。確認方法はノミを少しずつ立てていき、刃先に水が押し出される度合いで判断し、そこで角度を固定します。
7研ぎの確認(写真をクリック)
研ぎの仕上がり度合いは、刃先の返しを見て行う。一般的には指先を当てて返しを確認しますが、吉○さんは写真のように目視で確認しています。視力がずば抜けて良いようです。私はルーペでなければ目視で確認出来ません。
■研ぎが完了した時の確認方法は無く、実際に切って見なければわからないとのことです。刃先に返しが出来、仕上げ砥石で砥げば、切れるのが当たり前のようです。私は今まで爪や、髪の毛に触って引っ掛かり具合で確認していましたが、やめました。
8コンクリートブロックによる砥石の修正(写真をクリック)
中砥石をコンクリートブロックを使い平面を出す方法(大きく修正する時) を吉○さんから教わりました。(仕上げ砥石は不可)。私は修正砥石か、同じ粒子の砥石同士をこすり合わせて平面をだしていました。(吉○さんも、こすり合わせて平面を出しています)
■ブロックは新しい時はまだ表面が荒いので、そのまま中砥石を擦って平面が出せます。しかし、使っているうちに、すぐに、ブロックの表面がツルツルになるので、均一に砂を少し撒き、その上で砥石を擦り、平面出しを行います。
■砂は必ず川砂を使用し、網戸の網2~3枚重ねてこれをフエルターにして砂を濾します。砂に土の粒子が混入しているので、水が透明になるまで洗います。海砂やホームセンタの川砂はNG。(砂に塩分が含まれていると錆びる)。手元にあったケイ砂(6号)は、細かすぎるので不向きと言われたが、砂の後の仕上げに使用している。
9彫刻刀(写真をクリック)
この印刀?は竹細工に使用していた白引き(13mm)を角度を少し鋭角にして木の柄を付けたものです。切れ味が大変良く、切れが長持ちします。一番使用頻度が高いです。
■私は後期高齢者の仲間になりましたが、そのせいで、手の指紋が薄く、砥ぐ時ノミや彫刻刀が滑ります。これを防ぐため、滑り止めののメッシュを包帯のように巻いています。彫刻刀は常時緑色の滑り止めを巻いていますが、砥ぐ時は汚れ防止も兼ねて、その上からメッシュを巻いています。
10ノミ(写真をクリック)
一体目、二体目は主にノミを使用しましたが、三体目からは印刀を一番多く使っています。
■近くで骨董市が開かれる時、時折、彫刻刀とノミを購入します。ただし刃先が欠けたり、木の柄が割れたりと、修理に手間のかかるものがほとんどです。素晴らしく切れ味の良いものもあるが、不良品もあります。